PUR製本とは?特徴や違いを紹介

PUR製本とは?特徴や違いを紹介

PUR製本は、PUR糊を使用して本を綴じる製本方法です。本の根本から開きやすく、見開き1ページを開いたままにしやすい本に仕上がります。強度が高い製本方法であるため、写真集や美術書、教科書などの用途で使われます。

PUR製本は、通常の無線綴じよりも価格が高く、納期も長くなりやすいです。依頼時によく確認しましょう。

PUR製本とは

PUR製本は、無線綴じをする際に接着強度が高く耐熱性に優れたPUR糊(ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤)を用いる製本方法です。一般的な無線綴じでは、ホットメルトと呼ばれるEVA系(エチレン酸化ビニル)の接着剤を使用します。

PUR製本は冊子の強度や耐久性を高くできるため、ホットメルトを使うよりも丈夫で長持ちする冊子を作成可能です。

PUR製本の特徴

ページの開きが良い

PUR糊は従来のEVA系の接着剤よりも柔軟で、接着強度が高いです。糊の塗布量を少なくても綴じられるため、根本から見開きしやすい冊子を製作できます。

耐久性が高い

PUR製本は、耐久性が高い冊子を製作できます。接着強度が高く、EVA糊のほぼ倍の引っ張り強度があります。ページ数が多くても丈夫で壊れにくいです。

また耐熱性・耐寒性に優れており、-30度〜120度近い温度環境でも使用できます。さらに、紫外線や湿度にも耐性があるため、長期保存にも適しています。

ノド付近は色の劣化が起きにくい

PUR糊には耐インキ溶剤性があるため、絵柄をノド付近に印刷した原稿を使っても色の劣化が起きません。EVA系の糊を使う場合、ノド付近で糊と印刷インキが接すると化学反応をおこし、糊がつかないことや紙がシワになることがあります。

環境にやさしい

PUR糊は一度固まると高温でも溶けにくいため、古紙のリサイクルの過程で完全に分離可能です。さらに、本の背を切断せずにリサイクルができます。リサイクルのしやすさから、日本印刷産業連合会の古紙リサイクル適性ランクリストでも、PUR製本は最高のAランクに分類されています。

PUR製本の注意点

PUR製本は、コストがかかりやすいです。PUR製本で使用する材料は高価です。通常のEVA系の糊を使用した場合よりも金額が3〜5倍ほど高くなります。また、PUR製本を作るには専用の設備が必要です。機械導入のコストもかかるため、作成費用も高くなりやすいです。

また、PUR製本は普通の無線綴じと比較すると納期が長いことがあります。PUR糊が凝集力と接着強度を得て固まるまでには数時間から数日かかるためです。さらに、PUR糊は塗布される前に空気に触れると化学反応を起こし、糊つぼの中で次第に増粘するなど、取り扱いに手間がかかります。発注時には納期に余裕を持つとよいでしょう。

PUR製本の用途例

根本から開くと便利な冊子

PUR製本の背には柔軟性があるため、分厚い本でもページをめくれば本が開きっぱなしになります。本を開いたまま使えると便利なレシピ本や、子供を抱っこしながら読む絵本などに使われます。

さらに、コピーをとる可能性がある楽譜やカタログ、ビジネス資料なども、冊子の根本から開くPUR製本にすると取り扱いやすくなります。

表現にこだわりたい冊子

PUR製本は、写真集や図鑑、イラスト集などの用途でも便利に使用できます。見開きページで写真や画像をダイナミックに表現できるためです。同じ理由で、A5版などの小さめの書籍に文字をたくさん入れたいときにも選ばれます。

強度が必要な冊子

PUR製本は強度が高いため、教科書や参考書、絵本、マニュアルといった繰り返し開閉をする冊子にも適しています。

また耐熱性や耐寒性も高いため、世界中のさまざまな地域で読まれる聖書のような書物、夏場の車の中でも常に置いておく必要がある地図帳などにも対応できます。

PUR製本を製本業者に依頼

小ロットに対応可能なオンデマンド印刷の場合、PUR製本は最小依頼部数1〜10冊程度から製作依頼ができます。印刷時に版が必要で多部数に対応するオフセット印刷の場合は、最小依頼部数は100冊程度です。

PUR製本の対応可能ページ数の目安は、オンデマンド印刷の場合は16〜300ページ、オフセット印刷の場合は16〜608ページ程度です。

PUR製本の価格や納期の目安

PUR製本は1冊などの小ロットで作成する場合、3,000円~5,000円程度の価格になります。

・1冊あたりの価格例

24ページ(表紙4ページ含む)・コート紙90kg・A4サイズ・オンデマンド印刷の場合

注文部数 フルカラー モノクロ
1部 5,400円前後 3,000円前後
10部 1,600円〜5,200円 600円〜1,400円
100部 560円〜1,200円 200円〜450円

PUR製本の納期は、オンデマンド印刷の場合で4営業日出荷、オフセット印刷の場合は7営業日出荷が目安です。納期は、オプションの有無や部数によっても異なります。

印刷データの注意点

PUR製本は見開きしやすいため、ノド付近に書かれた文字や画像なども見やすくなります。ただし、文字中心の印刷データを製作するときはノド付近に20mm程度の余白を入れましょう。

見開きで写真や絵などを掲載する写真集などの場合は、基本的に絵柄のつながった印刷データが必要です。ただし、見開きの中心部分に人物の顔や重要なマークなどのメインとなるものは、できる限り中心部分に入らないようなレイアウトにしましょう。冊子のページ数や用紙の厚みなどによってノド付近の開き具合が異なると、中心の絵柄がずれて見えるなど、デザインに影響する可能性があるためです。

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