オンデマンド印刷とは?オフセット印刷との違いやメリット・デメリットを解説
更新:2023年6月23日

少ない量の印刷ならオンデマンド印刷、多い量の印刷にはオフセット印刷がおすすめと言われていますが、理由や印刷の仕上がりの違いをご存知でしょうか?この違いは「印刷版」を使うかによって生まれます。
オンデマンド印刷は印刷版を使用せず、データを直接印刷する方法です。印刷版がないため、様々なレイアウトの印刷に柔軟に差し替えでき、少量の印刷を低価格で対応できます。
一方、オフセット印刷は印刷版を使った印刷方法です。少数の印刷では印刷版の価格分オンデマンド印刷より割高です。しかし、1度印刷版を作ってしまえば百や千単位の印刷物をオンデマンド印刷より高品質に印刷でき、価格を下げることができます。
今回は、オンデマンド印刷とオフセット印刷の価格や仕上がりの違いと、それぞれのメリット、デメリットについて詳しく説明します。
オンデマンド印刷とは?
オンデマンド印刷は、版を使わず、デジタルデータを使い必要な時に必要な数量だけ印刷する印刷方法です。要求があり次第サービスを提供するという意味の「オンデマンド」という言葉に由来します。
また、オンデマンド印刷は出版業界で、POD出版(printon-demand)とよばれる出版方法にも活用されています。POD出版は雑誌や書籍のデータをあらかじめデータ化しておき、注文が入ってから製本を行い読者に届ける手法です。在庫をもつ必要がなく廃棄のリスクを減らせるため、絶版・品切れ書籍の重版や専門書などの出版に役立っています。
オンデマンド印刷のメリット
オンデマンド印刷は版を使わず、製版のための時間や費用などの固定費がかからないため、少部数の場合低コストでの印刷が可能です。また、修正や加筆の多い印刷物や、「バリアブル印刷」とよばれる1枚ずつ違う内容を印刷したい場合にも適しています。
一方、オンデマンド印刷は、同じデザインで印刷部数が増えても1冊あたりの料金はオフセット印刷よりも下がりにくいです。印刷物を1部出力するあたりのスピードがオフセット印刷に比べ遅いことなどが理由として挙げられます。
オンデマンド印刷のデメリット
オンデマンド印刷には、特色が使用できないことや色ムラが出やすいなどのデメリットがあります。
金色や銀色は原則として使用できない
プロセスカラーの4色の組み合わせでは、「特色」などの色はうまく表現できないため注意が必要です。オンデマンド印刷では金・銀・蛍光色・メタリックカラー・パステルカラーなどの色は、一部機種を除き表現できません。これらの色は、DIC、PANTONEという仕様で指定され、CMYKの4色では再現できないためです。
色味の再現がしにくい
オンデマンド印刷では、用紙に熱をかけインクを定着させるため、同じ色味を出すのが他の印刷方法より難しく、色の不備がでやすいです。
色の不備の中で対策しやすいのは、色ムラ、中抜け、割れ目、モアレです。テカリについては、オンデマンド印刷に使用するインクに含まれるワックスが原因になります。気になる方はオフセット印刷を使うとよいでしょう。
色の不備 | 状態 | 対策 |
テカリ | 黒インクの印刷などで、光の反射が強く出る | オフセット印刷を活用する |
色ムラ | 色の濃淡が異なり均一でなくなる | マット紙やコート紙など表面加工がされた用紙の使用する ベタ塗りよりもテクスチャ柄などを使う |
中抜け | 凹凸のある用紙の凹部分にインクが乗らない 薄い色の部分が印刷すると出てこない |
|
割れ目 | 濃い色の印刷をして折ることで、折り目部分がひび割れる | 表紙にPP加工を施す |
モアレ | 印刷時に意図していない柄が印刷物に現れる | トーンの重ねすぎや画像の拡大縮小処理を避ける |
オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い
オンデマンド印刷とオフセット印刷違いは、印刷に版を使うかと使用できるインクの種類です。これらの違いで対応しやすい部数や色の仕上がりが変わってきます。
オンデマンド印刷 | オフセット印刷 | |
版 | 不要 | 必要 |
印刷の仕上がり | オフセット印刷よりは多少劣る | 色の再現性が高い |
推奨印刷部数 | 500部以下 | 1000部以上 |
1,000部未満のコスト | 安い | 高い |
1,000部以上のコスト | 高い | 安い |
特色(金色・銀色など) | 使用不可 | 使用可能 |
納期 | 短い | 長い |
対応サイズ | A3サイズ程度まで | 大サイズも印刷可能 (A0、菊全判など) |
デザインの変更 (複数デザインの印刷しやすさ) |
対応しやすい | 対応しにくい |
オンデマンド印刷とオフセット印刷の仕上がりの違い
オンデマンド印刷とオフセット印刷では、オフセット印刷の方がきれいに仕上がります。これは、オフセット印刷のほうが高い解像度で処理できるためです。それぞれの印刷方法の解像度は、オフセット印刷は2400dpi前後、オンデマンド印刷は600~1200dpiになり、オフセット印刷の方がよりはっきりと細やかな印刷が可能です。
しかし、印刷物で一般的に推奨されている解像度はA1サイズまでが300~450dpiです。それ以上の大型の掲示物になると、遠くから見ることを想定したものが多くなりますので解像度200dpi程度が推奨されることもあります。
写真集など高い解像度にこだわりたい印刷物以外は、オンデマンド印刷で印刷しても問題ないです。
オンデマンド印刷と比較した際のオフセット印刷のメリット
オフセット印刷は、1,000部を超えるような印刷物向きの印刷方法です。印刷版や液体インクを使い、色ムラも起きにくく、細い線や小さな文字、グラデーションもキレイに印刷できます。
また、大量印刷でのデザインの再現性がオンデマンド印刷に比べ高いというメリットもあります。オフセット印刷は、版を摩耗せず均一に力が加わる構成になっているためです。印刷版にインクをのせ、さらに「ブランケット」とよばれるゴム製のローラーにインクを転写してから用紙に印刷することで、仕上がりを安定させています。
オンデマンド印刷と比較した際のオフセット印刷のデメリット
オフセット印刷は、製版コストと納期の遅さがデメリットです。少部数だと印刷コストが割高です。
また用紙によって色が少し変わってしまうことがあります。商業印刷で使われるオフセット印刷の多くに使用するのは液体のインクです。そのため、上質系用紙など吸水性が高い紙へ印刷すると、インクが紙に染み込むことで色の彩度が落ち、暗い印象の仕上がりになることもあります。
オンデマンド印刷とオフセット印刷に使われる印刷方式
オンデマンド印刷の印刷機には、使うことができる色の数で単色印刷機(黒のみ)、2色機、4色機があります。フルカラーの印刷ではCMYKなどシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが使われます。4色のインクを順番に重ね、使うインクの量を調整することでさまざまな色を表現します。
オンデマンド印刷とオフセット印刷のどちらも4色の色を組み合わせてフルカラー印刷する点は同じです。しかし、印刷する際にどのようにインクを用紙につけるかという工程に使われる原理やインクの種類が違います。
オンデマンド印刷に使われる印刷方式
オンデマンド印刷では、電子写真方式やレーザープリンター方式とよばれる印刷方法が使われています。オンデマンド印刷で特に多く使われているのがトナーインクを使った電子写真方式の印刷です。
オンデマンド印刷のインクの種類は印刷機の機種によって決まり、変えることができません。またサイズの拡大が難しく、印刷可能サイズがA3サイズまでになる印刷機が多いです。
電子写真方式(トナー方式)
電子写真方式は静電気を利用して図面をつくり、紙にインクをつける印刷方法です。トナー方式やレーザー方式ともよばれます。他の印刷方法と比較し、早く高画質な印刷ができます。
電子写真方式の印刷の流れ
- 感光体ドラムに静電気を発生させる。
- 印刷したい部分の静電気をLEDで除去し静電気が発生していない部分にトナーインクがつく。
- 印刷したい紙の反対側から電荷をかけ、紙にトナーをのせる。
- 用紙にインクがのったら、熱をかけてインクを固定する。
インクジェット方式
ノズルとよばれる小さな穴から液状のインクを飛ばし、印刷用紙の上にインクをのせる印刷方法です。
インクジェット方式には、印字する場合だけインクを飛ばすドロップオンデマンド型と、連続的に吐出されるインクを偏向電極で曲げることで描画していくコンティニュアス型の印刷機があります。
どちらも600~1200dpiの解像度でオフセット印刷と近い品質で印刷できます。
現在のオンデマンド印刷の主流は、長期的な印刷コストを安くできる電子写真方式(トナー方式)です。インクジェット方式は1200dpiという高い解像度を出せる機種もあるため、写真など鮮明な印刷が必要な場合に使われます。印刷機は、業者によって導入しているものが違う場合があります。
電子写真方式(トナー方式) | インクジェット方式 | |
インク | 粉末 | 液体 |
仕上がり | △ | 〇 |
印刷スピード | 〇 | △ |
インクの種類 | 〇(金・銀などあり) | △ |
用紙の制限 | 熱に弱いもの不可 | なし |
コスト | 〇 | △ |
オフセット印刷に使われる印刷方式
オフセット印刷は、平版印刷ともいわれる印刷方式です。そもそもオフセットは転写(OFF)、印刷(SET)という工程がある印刷方法全般のことを指します。電子写真方式などにも転写・印刷の工程が使われオフセットとよばれることがありますが、この記事では平版印刷をオフセット印刷として説明します。
オフセット印刷の流れ
- 印刷したい図面を型取った版にインクをつける
- 版からブランケットとよばれるゴムローラーに図面を転写する
- ブランケットから用紙にインクを印刷する
オフセット印刷機の版から用紙に直接印刷しないことで、版の摩耗を防ぎ大量印刷が可能になります。また弾力性のあるゴムローラーを使って転写することで均一に用紙に力がかかり、濃淡のムラなども出にくくなることが特徴です。
オンデマンド印刷やオフセット印刷を使った印刷物
印刷物ごとにオンデマンド印刷とオフセット印刷どちらを選ぶべきか目安をご紹介します。
オンデマンド印刷に向いている印刷物
・名刺の印刷
名刺の印刷にはオンデマンド印刷が向いています。用紙サイズが大きくなく、氏名や部署などデザインの変更があっても柔軟に対応できるからです。
・ポストカード(ハガキ)の印刷
ポストカードの印刷にはオンデマンド印刷が向いています。製版が不要のため、宛名が一枚ずつ異なってもコストや納期はあまりかかりません。
オフセット印刷に向いている印刷物
・パンフレットの印刷
企業パンフレットなど、高い品質が求められるものはオンデマンド印刷より出力解像度の高いオフセット印刷が向いています。小さい文字や繊細なデザイン、写真もにじまず鮮明に印刷がしやすいです。
・チラシ・ポスターの印刷
チラシやポスターを大量に作成する場合は、オフセット印刷がおすすめです。同じデザインのチラシやポスターを高い品質で印刷しやすいです。また、対応できる用紙サイズも多いため、大きいポスター印刷にも向いています。
まとめ
この記事ではオンデマンド印刷とオフセット印刷の仕上がりや印刷できることの違いについてご説明してきました。
オンデマンド印刷とオフセット印刷を比較するとオフセット印刷の方がきれいに印刷できます。この大きな違いは「印刷版」の有無でした。印刷版が無く、少量でも低価格でご提供できるのが「オンデマンド印刷」。印刷版があり、百、千単位の多量印刷を高品質でできるのが「オフセット印刷」です。
こだわりの冊子を少量作成されるのであれば、オンデマンド印刷がおすすめです。
冊子の制作を検討している方は、ぜひ冊子製本キングにご相談ください。