製本会社を利用したzineの作り方

更新:2023年8月8日

製本会社を利用したzineの作り方

zine(ジン)にはたくさんのジャンルや形があり、なんでも自由に作っていいとも言われています。とはいえ、初めてzineを作るのであれば、どんな形にしたらいいのか迷われる方も多いかと思います。

また、お得zineを作るのであれば、自分で作るか業者に依頼するかを悩んでしまう方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、「zine」の意味や種類、自分で作るのか業者に依頼するのかの判断基準についてもご紹介します。

「zine(ジン)」とは、個人もしくはグループが行った「自主的な出版活動」です。ジャンルや紙、製本方法などを問わないため、これだと定義するのが難しいのがzineです。

日本でなじみの深い「同人誌」もzineに含まれます。また「ミニコミ」「リトルプレス」「アートブック」などと呼ばれることもあります。

例えばアーティストが作る作品集や友だちに配るような愛犬の写真集もzineと言えるでしょう。だれにでも作れて、アートや文芸、マンガや旅行記などのさまざまなジャンルにおよび、無料での配布や有料で販売する場合もあるなどzineは多種多様です。

ZINEの起源は18世紀のアメリカと言われていますが、現在の出版形態に近いルーツとしては、20世紀前半のアメリカのSFファンたちの出版物「fan magazine(ファン・マガジン)」になるのではないでしょうか。「fan magazine(ファン・マガジン)」がそのうち短く「ZINE(ジン)」と呼ばれるようになったとされています。

1980年代から1990年代にかけてコピー機が普及し、パソコンを使える人も増えると、ZINEを作る人たちは一気に広がっていきました。1990年代以降にインターネットが普及すると、紙のZINEと同じものがインターネットでも発表されるようになります。また、ZINEは手配り中心の時代からインターネット経由でも手に入る時代へと変化してきました。

zine の最大の特徴は「自由」であることです。ホチキスや糸で留めた本のzine や、綴じずに紙を折っただけのzine、正方形や三角形などの変形した形のzineなど、作り手のアイデア次第でさまざまなzineが存在します。

そんな多種多様なzineですが、今回は4種類の形をご紹介します。

自由なzineの中でも、紙を半分に折り、真ん中をホチキスや糸で綴じた形がメジャーです。写真やイラストのアート系zine、小説や詩集などの文芸系zineのように、どんなジャンルでもまとめやすい形態です。

サイズはA4、B5、A6、B6とさまざまです。

ペラっと壁新聞のような1枚の紙だけのzineもあります。「二つ折り」をしただけのzineや、「直角四つ折り」という2回だけ折ったzine、内側に折り込む「観音折り」のzineや、屏風のように3つに折って「外三つ折り」のzineなども1枚からできています。

また1枚の紙を折ることで、本の形のzineにすることもできます。1枚を「二つ折り」すると4ページ、「四つ折り」すると8ページ、「六つ折り」すると12ページの本になります。最後に折った山の部分をホチキスや糸などで綴じ、反対側の部分をカットするとパラパラとページがめくれるようになります。

1枚の紙から作るzineを業者に依頼するには「ポスター印刷」や「チラシ印刷」、「折りパンフレット」などを参考にしてみてください。

手のひらに収まるくらいの大きさで、豆本のようなzineです。正方形の本だったり、三角形がジャバラに折られた形だったり、中身だけでなく見た目も個性的なzineも多くあります。

変形した形を印刷できる業者は限られていますが、「カード印刷」や「名刺印刷」を利用するといいでしょう。

最後に糊で背を固めて本にしたり、穴をあけてリングに通したりしてまとめてみてはいかがでしょうか。

自身の世界観や、商品の背景をイメージさせるようなアート性が高く「1点もの」に近いzineもあります。

紙に刺しゅうをほどこしたり、イラストの形に切り抜いたりと創意工夫すればさまざまなzineを生み出せます。

全てを自分で作業するのはとても大変で難しく感じられるかもしれませんが、印刷は業者に依頼してみると、もう少しハードルが下がるかもしれません。例えば業者から届いた紙や本を、カッターでオリジナルの形に切り抜くだけで個性的なzineが出来上がります。

また業者によっては、オリジナルの形に切り抜く「型抜き」や、角を丸くカットしてくれる「角丸」といったサービスもあるので利用してみてはいかがでしょうか。

日記や小説形式のzineであれば、Wordで作成するのが手軽です。もし、InDesignやIllustratorなどのデザイン系ソフトが使えれば、紙面により自由度が生まれ、レイアウトが美しく仕上がります。
そうでなくとも文章が中心となるzineであれば、Wordで十分です。

zineには「b7バルキー」という種類の紙をおすすめしています。雑誌などにも使われている紙で、すっきりとした白とやわらかい紙質が特徴です。
また、表紙、裏表紙には「アイベスト」というやや光沢と厚みのある紙がおすすめです。手にとったときの重厚感、仕上がりの美しさが際立つ素材です。

これもお好みなのですが文庫本を基準とし、文庫本サイズか一回り大きいくらいのサイズが好まれる傾向があります。カバンの中からスッと出し入れできるくらいのサイズがベストです。作成時に必ず留意していただきたいのが仕上がりサイズより一回り小さく作り、天地左右に白場を設けていただくことです。
例えば、文庫本の仕上がりサイズは縦148mm、横105mmとなりますが、ページ内の本文の文字はその一回り小さな縦127mm、横87mmくらいに抑えると読みやすくできます。文字の大きさやフォントの種類は各執筆者にお任せしてもいいですし、全体で統一してもよいです。

zineを作るときに気になるのは費用かと思います。どんなzineを作るかによって費用は大きく変わってきますが、ここでは一般的な「本」での作成費用をご紹介します。
zineの作成の費用の目安を知るために、自分でzineを作成する場合と、業者に依頼した場合で比較してみます。

まず「自分でzineを作成する場合」とは、ご自身でコンビニのコピー機を利用して印刷し、ホチキスで綴じて完成させることを想定します。「業者に依頼する場合」とは、zineのデザインまで自分で作成し、そのあとの印刷、製本といった工程を業者に任せたことを想定します。

今回はどちらも下記の条件で1部作成した場合で比較してみます。

■ サイズ:B5
■ ページ数:16ページ
■ 部数:1部
■ 綴じ方
自分で作成:袋綴じ
業者:中綴じ
■ 用紙
自分で作成:コピー用紙
業者:上質紙90㎏
※業者の納期は7営業日です。

モノクロ/1部 カラー/1部
自分で作成 160円 800円
業者に依頼 554円 786円

1部だけzineを作成するのであれば、自分で作成した方が安く仕上がりそうです。

ただし、コンビニのコピー機は印刷部数を増やしても1部当たりの費用は同じですが、業者によっては部数が多くなればなるほど、1部当たりの費用が安くなることがあります。

冊子製本キングではモノクロの場合、150部の印刷で1部当たり114円、300部だと1部当たり102円と部数が増えると単価が安くなります。

多部数のzineの印刷コストを抑えつつ、きれいに製本したい場合は業者に依頼するのがおすすめです。

zineを作る際に注意していただきたいのが「著作権」です。

「個人で作って無料で配布するなら気にしなくていいのでは」と思う方も多いのではないでしょうか。

家庭内や仕事以外の目的で使用する場合などは著作権を複製することができますが、著作権者の許諾を受けずに無断で販売するといった行為は著作権侵害にあたります。

例えば著作者の許諾を得ずに漫画やアニメのキャラクターをzineに掲載した場合、販売をすると著作権法にひっかかるので、自分だけのものとして作成する必要があります。その他にも著作権に関するルールは数多くあるので、自分のzineが著作権法にひっかからないか確認しておきましょう。

参考:著作物が自由に使える場合│文化庁

参考:著作物を無断で使うと?│公益社団法人著作権情報センター CRIC

zineに「『フリーイラスト』や『フリー素材』は自由につかっていいのでは」という考えの方がいらっしゃるかもしれません。

「フリー」と書いてあっても「自由に使っても良い」わけではありません。金銭の支払いで許諾を得れば許容されている範囲内で使用できる「ロイヤリティフリー」の場合もあります。また、zineを販売するのであれば「商用利用」になります。商用利用を禁止しているサイトもあるので注意してください。

「フリーイラスト」や「フリー素材」のサイトの利用規約に、どのような場合は利用ができないかが書かれていますので、必ず確認するようにしてください。

ご自分のSNSの紹介のためなどに、有名アプリの「アイコン」をzineに使用することがあるかもしれません。「アイコン」の画像データを使用する際にも注意が必要です。

ほとんどが商標登録されているので使用が許可されていても、使用方法はブランドごとに「ガイドライン」をもうけています。ブランドカラー以外の使用を禁止していたり、他の画像と重ねての使用を禁止していたりと、使用範囲が限られている場合があります。必ず使いたいアイコンの公式サイトでガイドラインを確認してください。

また使用するアイコンの画像データを、公式サイト以外から入手する際には注意が必要です。そのサイトが公式から許可を得ているとは限りませんし、その画像データが著作権を侵害している場合があります。必ず公式サイトからダウンロードするようにしましょう。

満足いくものに仕上がった1冊。しかし、どういうルートで、どうやってシェアや販売すればいいのか?とお悩みの方も多いはずです。代表的なものをいくつかご紹介します。

販売ルートの中で一番チャレンジしやすい方法です。デザインや写真など視覚的な要素が盛り込まれているzineをシェアするなら、Instagramがおすすめです。ただし、発送の手間やお客さんが銀行振り込みを行うなど、双方に手間が発生するので対応できるように準備しましょう。

外部業者に委託してzineを預かってもらい、発送と支払いを代行してもらうというシステムです。手数料とマージンが卸値の約20~30%かかってしまいますが、①のような手間がかからないため、お忙しい方におすすめです。

自宅あるいは場所を借りて、直接お客様に販売する方法です。友人が個人経営のカフェなどをしている場合だと、「ちょっと置かせて!」と頼みやすいかもしれませんね。またzineの販売ができる専門のショップやイベントもあります。興味がある方は調べてみてもよいでしょう。

「zine(ジン)」は、個人もしくはグループが行った「自主的な出版活動」です。ジャンル、紙、製本方法などに決まりはないため、定義するのが難しいですが、zineの基準となるのは「自主的な」「一般的な新刊書店の本棚には並ばない」の2点になるでしょう。

少部数のzineを作成したい場合は自分で作成したほうが費用を抑えられますが、多部数のzineを作成する場合は業者に依頼したほうが費用を抑えられるうえに、きれいに印刷、製本できます。

こだわれば、どこまでもこだわることができるのがzineです。常識にとらわれず、あなたの好きなことを盛り込んだ、オリジナルのzineをぜひ作ってみてください。